西洋医学における診察は、病症から疾患部を突き止めますが、東洋医学では、疾患部を部分的にとらえるのではなく、まず病人の生命反応を総合的かつ本質的に診ていきます。つまり、基本的な生命現象を「陰陽虚実」という東洋医学の概念でとらえて診断するわけです。
これを「証を決定する」といいますが、これは当然、素人にはできません。資格を持った薬剤師・鍼灸師に相談されることをおすすめします。
からだの陽気(熱エネルギ-)は、たえず体表面から適当に発散されています。ところが外邪(風・寒など)によって、この陽気の発散が妨げられると、気血の流れに変調をきたし、そのため発熱します。体温計で測って熱があるときは、熱が体表に集まっている状態ですから、からだの中心部分特に胃腸のあたりは冷えていることが多いのです。それで発熱してからだがほてっているのに、ゾクッと寒気がするといったことが起こります。こういう場合は、体温計が示す数値が高いので、重症だと思いがちですが、それだけからだの気血が多いということなのです。反対に、体温計で測っても余り数値は高くないのに、なんとなく熱っぽく、寒気を強く感じて、手足も冷え、さらに下痢や食欲不振もある、といった状態はもともと気血が少ないうえに外邪が強く加わったためです。体力のない人やお年寄りによく見られる症状です。
発熱と悪寒が交互に起こる | -吐き気がし、便秘気味、みぞおちから脇が硬く、つかえ、頭痛や肩こりもある | -大柴胡湯 |
発熱と悪寒が同時に起こる | -頭痛がし、関節が痛んだり、だるい、汗は出ない | -麻黄湯 |
食欲がなく吐気 | -2-3日たっても熱が下がらず悪寒がし汗がよく出る | -柴胡桂枝湯 |
-発熱と悪寒が交互に起こり、鳩尾から脇がつかえ、舌に白苔 | -小柴胡湯 | |
食欲は普通吐気 | -悪寒や頭痛がし、項から肩がこり、汗は出ない | -葛根湯 |
汗がよく出る | -発熱と悪寒が交互に起こり、口が渇き、寒気がひどい | -柴胡桂枝乾姜湯 |
-悪寒や悪風がし鼻水がよく出て、吐気がし脉が弱い | -桂枝湯 | |
汗が出ず体が冷える | -胃腸が弱く、鳩尾あたりに動悸がする | -真武湯 |
-体力、氣力ともになく、下痢気味、手足もひどく冷える | -四逆湯 |
梅酢(風邪熱と心身疲労に効果):梅酢とは、梅の実を塩漬けにしたときにできるエキスです。梅には有機酸がたっぷり含まれ、とくにクエン酸はカルシウムなど、ミネラルの吸収を助け、新陳代謝を活発にして疲労回復を助けます。
用法:杯1杯の梅酢を湯のみ茶碗に入れ、適量の砂糖かハチミツを加え、熱湯を注いで空腹時に服用します。
ミミズ(解熱に速効性):漢方薬では乾燥させたミミズを「地龍(じりゅう)」といって解熱の特効薬として使われます。効き目は生のミミズのほうが高いということですが、漢方薬局では乾燥したものを求めたほうが扱いやすいでしょう。
用法:地龍5~20gを、水540cc(3合)で煎じ、半量になったら減っただけの水を加えて、さらに半量になるまで煎じます。これを1日2~3回、食間に服用します。念入りに煎じることが大切です。
微熱は疲れたときなどの軽度の発熱もさしますが、微熱が続くとなると、病巣が体の奥に入り込んでいる慢性病の症状といえます。この微熱の原因を東洋医学では、大きく3つに分けています。第一に挙げられるのが胸脇苦満。鳩尾から胸脇にかけて硬くつまった感じで、圧痛があるといった症状です。これは「肝・胆」の気が失調し、「胆」の熱が鳩尾あたりに鬱滞して起こります。胸脇苦満は、柴胡剤を用いる目安となる症状で、西洋医学でいう肝炎や胆嚢炎などがこれにあたります。第二がお血。血の流れが悪い場合で、その結果、気のめぐりも悪くなり、ある部分に鬱滞します。慢性腎炎などもお血による場合があります。第三は水毒(津液)。水分の代謝が悪い場合です。
鳩尾から胸脇がつまる | -食欲がなく、吐気がし、白苔がある | -小柴胡湯 |
-小柴胡湯証があり、神経質な場合 | -柴胡桂枝湯 | |
鳩尾から胸脇がつまらない | -のどが渇き、尿の出が悪く、吐気もする | -五苓散 |
-冷えのぼせがし、下腹がはり痛む | -桂枝茯苓丸 |
関節が痛い | -冷え性で、尿の出が悪く関節が腫れることもある | -桂枝加朮附湯 |
関節痛なし | -冷え性で貧血気味、めまいや頭痛もする | -当帰芍薬散 |
解熱・疲労回復にクズ(葛) | 根は解熱に、花はアルコ-ル毒の解毒に、葉は強壮効果のある青汁に、くず粉は汎用性の広い病人食にと、クズは全草が利用できるありがたい薬草です。解熱剤として使う場合は、漢方薬局で「葛根」を購入するとよいでしょう。 |
用法 | 葛根3~7gを200ccの水に入れ約半量になるまで煎じます。これを濾し分けて、3等分にし、食間に服用します。子供の場合は大人の半遼にします。 |
ほてりと冷えというのは正反対の症状であるにもかかわらず、東洋医学ではこれらふたつを表裏一体と考え、切り離しては扱いません。ほてりと冷えに同一の処方を用いることさえあります。なぜなら冷えたりほてったりするのは、「気」と「血」のどちらかが不足して、経脈中をスム-ズに流れず、どこかで停滞しているために起こる症状だと考えるからです。手足がほてることを手足煩熱といい、もともとからだが弱い人や大病後、産後などに起こりやすい症状ですが、この場合、本人がほてっていると感じていても、必ずしも外から触れて熱いとか、赤くなっているとは限りません。帰って冷えていることさえあります。どちらにせよ、自覚的にほてっていると感じたら、煩熱があると判断してよいでしょう。自分に適した処方を選ぶ場合には、体力の有無の次に血色の良し悪しや、胃腸が丈夫かどうかなどがポイントになります。
全体的に血色がよい | -手のひらや足の芯がほてり、口が乾き、不眠症 | -三物黄芩湯 |
-冬でも足がほてり、コタツに入りたくない | -黄連解毒湯 | |
血色は普通 | -発熱、頭痛がし、手足がほてり、食欲がない | -小柴胡湯 |
胃腸が比較的丈夫 | -疲れやすく、手足が冷え口渇、頻尿または尿量減 | -八味丸 |
胃腸が弱い | -とくに春や夏に手足がだるく、顔色が優れない | -小建中湯 |
足のほてりに効く 「志室」 | ちょうどウエストライン上で、背骨の中心から3cm外の両側にあるツボが「志室」です。足がほてるときは「腎」の働きが悪い場合が多いのですが、「志室」は、「腎」の働きを良くし、腰痛などの症状も緩和させます。 |
手のほてりによい 「太溪」 | 「太陵」は手首の関節内側の中央のあるツボで、心包経上にあります。心包は精神的なことに関連が深く、心労が重なると、この心包経がこってきます。 「太陵」は手のほてりのほかに、神経性心悸亢進などに効果的です。 |
風邪を引いたとき、熱が高いのにもかかわらず、寒くてたまらない、といった症状を経験することがあります。これは外邪(風、寒など)によって気血のめぐりに変調をきたし、どこかに滞ってしまったためです。そのため、気血の集まった部分は発熱しますが、逆に気血の衰えた部分は悪寒を感じます。例えば、体表に熱が集中しているときは、体の奥が冷えていることが多いのです。ただし、もともと気血の少ない人には、発熱よりも悪寒をよく訴えます。ですから、適した処方を選ぶには、体全体の症状を注意深く観察する必要があります。ポイントとなる症状は、発熱に有無や発熱に仕方、汗がよく出るかでないかなどです。また、東洋医学では寒気がするという症状を、悪寒と悪風に分けています。悪寒というのは、汗が出ず、いくら着込んでもガタガタと寒い状態で、悪風は室内ではどうもないのに、発汗して外気に触れるとゾクッとする状態です。
発熱と悪寒が同時に起こる | -頭や関節が痛み下半身が重く感じ、汗は出ない | -麻黄湯 |
-関節が痛み、体が重く感じ、喉が乾き、尿が減る | -大青竜湯 |
発熱と悪寒が交互に起こる | -便秘気味で、喉が乾き、食欲不振 | -小柴胡湯 |
発熱と悪寒が同時に起こる | -頭痛や咳、痰を伴い、鼻水が多い | -小青竜湯 |
発熱するが熱感は少ない | -汗が出る -頭痛、悪風がする | -桂枝湯 |
-汗が出る -頭痛、腹痛し、手足が冷える | -桂枝加附子湯 | |
-汗が出ない -咳や咽頭痛があり、冷える | -麻黄附子細辛湯 | |
発熱しない | -背筋の悪寒がとくにひどく、体が痛む | -附子湯 |
-全身が寒く、下痢をし、手足が冷える | -四逆湯 |
柴胡(急激な発熱による悪寒を鎮める)
柴胡は、もともと、マラリヤの間歇熱(一定の時をおいて、熱が出たり引いたりして、その間激しく悪寒に見舞われる)によく効く薬草として使用されます。インフルエンザや頭痛によく効き、めまい、月経不順などにも用いられます。
「用法」:柴胡2~5gを水400ccで煎じ、3回に分けて食間に服用します。
風邪のひきかけに 「風門・風池」 | 背中がゾクッとして、風邪を引いたかな、と感じたときに、このふたつのツボにドライヤーの温風を当てると楽になることが多いものです。 |
ゾクッとしたら 「麦芽糖生姜糖水」 | 土鍋に、皮をむいて薄切りにした生姜25gと、麦芽糖50gを入れ水450ccを注ぎ中火にかけます。30分煮込んでから1日2回、温かくして飲みます。寒気がして、咳や痰があるときに効果的な飲み物です。 |
疲れというのは、健康人と病人との間の状態で、この疲れを除くのに、漢方はとても適しているといえるでしょう。東洋医学では、疲れのことを虚労といいます。これには5種類(行なう ― 肝に負担、見る ― 心に負担、座る ― 脾に負担、臥す ― 肺に負担、立つ ― 腎に負担)あるので、五労といいます。またセックスによる疲れを房労といいます。さらに深く思い煩うといった精神的な疲れや、内蔵の疲れも含めたものを指しているようです。つまり、東洋医学では、疲れを単なる体だけの症状とは考えず、体力、体質、性格、生活態度など、疲れの原因となっているものを総合的にとらえて、治療を行ないます。心身の疲れは、病気への誘引となりますので、まずは日々の生活改善を心がけたいものです。
胃腸が弱っている | -下痢しない | -顔色が悪く、食欲がなく、貧血ぎみ | -十全大補湯 |
-下痢ぎみ | -食欲がなく、食後にだるく眠い | -補中益気湯 | |
-下痢ぎみ | -食欲がなく、足や膝の力がぬける | -清暑益気湯 | |
胃腸は悪くない | -気力がなく、肩こり、めまい、頭痛がする、冷え性 | -当帰芍薬散 |
手足がほてる | -朝起きたとき、特に手足がだるく、胃が弱く貧血ぎみ | -小建中湯 |
-下腹部が軟弱で、夜間トイレによく行く人(老人)、喉が乾く | -八味丸 | |
手足が冷える | -胃腸も冷えやすく、痛んだり下痢をする、尿や唾液が多い | -人参湯 |
胃腸障害を伴う疲れに「中かん・足三里」数多いツボの中で、特に敏感に病変の反応をあらわすツボを兪穴・募穴といい、治療にもよく使われます。「中かん」は剣状突起と臍の中間にあるツボで、任みゃく上の募穴です。みぞおちあたりの不快症状をやわらげ、胃痛や腹痛、下痢を治します。「足三里」は膝の下3cm、脛骨の外側にあり、昔から効能の多いツボとして有名です。とくに、胃腸障害に効果的なツボとして有名です。胃腸の働きを回復させ、全身の疲れも取り去ります。
疲労回復・体力増強にニンニク
たいへんな滋養強壮効果のあるニンニク。漢方では(大蒜:たいさん)といって、利尿・去痰、健胃、駆虫剤に用います。ニンニクの効能はスコルジニン(抜群の新陳代謝促進力をもつ)とアリシン(強力な殺菌作用をもつ)によるものだといわれています。
「おろしニンニク」 | 薄皮をむいて、すりおろしたニンニクを、そのまま飲みます。生ニンニクはたいへん刺激が強いので、胃をならすために耳かき1杯分から始めて1日1かけを限度に、空腹時を避けて服用してください。 |
「注意すること」 | ニンニクは食べ過ぎると溶血作用が起こり貧血のもとになるので生よりも加熱したものを服用しましょう。生ニンニクの長期連用は禁物。ビタミンB2が欠乏して、口内炎、口角炎、舌炎、皮膚炎などになりやすくなります。生ニンニクは刺激が強いので、皮膚の弱い人、アレルギ―性の人はゴム手袋などをするなどして、ニンニクに直接触れないようにしましょう。 |
(1)夏バテによい飲み物「五味枸杞飲」
酢を少量加えてあぶった五味子と、細かく砕いた枸杞子各100gを耐熱容器に入れ、熱湯1500cc注ぎ入れ、密栓して3日間漬けます。お茶代わりに飲むと夏バテを改善します。
(2)元気が出る「姜橘椒魚羹」(きょうきつしょうぎょかん)
薄切りしたショウガ30g、陳皮10g、胡椒3gをガ-ゼで包み、鮒の腹の中に詰め、適量の水と食塩を加えてとろ火で煮ます。空腹時に煮汁と共に魚を食べると「脾」を強くし、冷えからくる腹痛なども治します。
やせていても、心身に共に健全で、不快症状がない場合は心配いりません。問題になるのは急に体重が減ってきた場合です。こういうときは、病院で検査をしてもらったほうが無難でしょう。だいたい、やせている人は胃腸障害や貧血を訴えるケ-スが多いものです。また神経質な人が多く、ストレスが胃腸に悪影響を及ぼして、悪循環になってしまいます。処方を決めるにはまず、喉が渇くかどうかをみます。喉がとても渇くときは、糖尿病が考えられます。渇かないときは、体質的、精神的な要素が大きいので、生活習慣の改善を心がけましょう。
喉が渇く | -胃が丈夫 | -口中が乾燥している | -白虎加人参湯 |
-体力は普通 | -口中や皮膚も乾燥する | -竹葉石膏湯 | |
-体力がない | -口中は潤って、夜間頻尿 | -八味丸 | |
喉が渇かない |
-冷え性 | -虚弱で胃腸が弱く、吐気もする | -人参湯 |
-冷え性 | -貧血ぎみで寝汗をかく、大病後 | -十全大補湯 | |
-冷え性でない | -顔色後悪く、食欲がなく、胃に振水音 | -六君子湯 |
脾虚によるやせすぎに「豚胃粥」
豚胃500gをよく洗い、鍋に入れて適量の水を加え七分通り煮ます。豚胃をすくいだし、千切りにします。白米と千切りにした豚胃隔100gと先の煮汁を煮立てて粥を作り、ネギ、ショウガを加えて好みの味に調味します。この中で、白米、ネギ、ショウガは「肺」にはいり丈夫にします。「肺」は相生関係で「脾」の子なので、「肺」を養うと、親である「脾」も養われることになる。また、「肺」は「腎」の親でもあるので「肺」が充実するとこの「腎」も養われ、腎気(元気)が出てきす。
貧血の人に「飴鷄」
雌鳥(めんどり)1羽の内臓を除き、よく洗います。おなかの中に生地黄、ネギ、ショウガ、食塩を少量入れ、さらに飴糖100gを注ぎ入れ、切り口をふさぎます。水を適量入れ、よく煮込みます。地黄は補血剤ですから、貧血ぎみの人にも効果的な料理です。
汗の出方は、余り気にしませんが、東洋医学では比較的重視する症状です。汗がタラタラ流れたり、まったく汗がでなかったり、というのは体の中や表面の水分の量のほか、汗腺を開いたり閉じたりする機能の可否も影響しています。そして、汗の出方に異常があると、付属症状として、必ず体のどこかに調子のよくないところがあると判断します。寝汗のことを東洋医学では盗汗といい、汗の異常な出方のひとつと考えています。汗に関する処方には、黄耆を用いるものが多くあります。黄耆は止汗・利尿・強壮剤として使われ、体表の水(津液)を取り去る働きがあります。
貧血ぎみの人 | -尿量は普通 | -疲れやすく、腹痛を起こし、喉が渇く | -黄耆建中湯 |
-尿量は普通 | -大病後などで痩せていて、食欲がない | -十全大補湯 | |
-尿量は普通 | -疲れすぎて発汗し、病後で体力のない人 | -補中益気湯 | |
貧血ぎみでない人 | -尿が少ない | -初夏、身体痛、寒気、脱汗、足冷、頻尿 | -桂枝加附子湯 |
-尿が少ない | -水肥りで、浮腫みがあり、疲れやすい | -防已黄耆湯 | |
-尿が少ない | -一見丈夫そうだが、風邪を引きやすい | -桂枝加黄耆湯 |
不快な寝汗を防ぐ「山茱萸」
山茱萸の実は、強壮効果があることで知られていますが、寝汗・月経不順・月経過多、冷え性、耳鳴りなどにも効果があります。
浮腫みのことを、東洋医学では水腫といい、体の中の水分の流れが悪くなり、顔や四肢、胸,腹などに浮腫みを起こすことをいいます。これには、表証(体表)の水腫と裏症(体内)の水腫があります。表証の多くはいろいろな外邪の侵入によって「肺」の気がスム-ズに流れなくなり、内臓の水分の代謝が悪くなるものです。裏症は「脾」や「腎」の働きが弱ったため水湿を運ぶことができなくなった浮腫みを指します。いずれの場合も服薬すれば、尿が気持ちよく出るようになります。また裏症は、表証から変転して起こる場合が多いようです。寒や風の邪が侵入し、風邪を引いてしまい、その結果腎炎などを引き起こしてしまうことが多いことなどを考えると、納得できます。やはり、風邪をこじらせると怖い、ということでしょう。
全身がむくむ | -体力がある | -喉が渇き、発熱し尿が減る | -越婢加朮湯 |
-体力は普通 | -喉が渇き、発熱し、尿が減り、食欲なく汗かき | -五苓散 | |
-尿量は普通 | -疲れすぎて発汗し、病後で体力のない人 | -補中益気湯 | |
顔と足がむくむ | -尿少ない | -動悸、のぼせ、眩暈がある。体力がない | -苓桂朮甘湯 |
-尿少ない | -体力は普通以上で、鳩尾がかたい、息苦しい | -木防已湯 | |
-尿少ない | -おもに四肢がむくみ、けいれんする | -防已茯苓湯 | |
足がむくむ |
-喉が渇く | -体力なく、下半身だるい、尿量減るが頻尿 | -八味丸 |
-喉は渇かない | -貧血ぎみ、筋肉がやわらかい、胃に振水音 | -真武湯 | |
-喉は渇かない | -色白で水肥り、冷え性で汗をかく、尿減る | -防已黄耆湯 |
(1)腎臓を丈夫にして浮腫みを取るアケビ(木通)
雑木林などで、ほかの木にからみついて成長するアケビ。それのつる、葉、実は、腎臓病からくる浮腫み、淋疾、月経不順、腫れ物に効果を示します。アケビのつるを干したものを、「木通」・「通草」といい、気血や水の流れをよくする消炎性利尿剤として用います。
「用法」:つるは、夏に採取し、日干しにして細く刻み、1日8~10gを煎じて服用します。
(2)むくみとりにトウモロコシのひげ
腎臓病・高血圧・妊娠時などの、むくみとりには、昔からトウモロコシのヒゲが用いられてきました。漢方では「南蛮葉」といい、乾燥させたトウモロコシのヒゲを1日10g煎じ、3回に分けて服用します。
(1)まぶたや顔の浮腫みに 「瞳子りょう」(どうしりょう) | 目尻から5mm外側にある骨のくぼみにあるツボ。まぶたや顔が腫れぼったいときや、目が疲れたときに指圧すると効果的です。 |
(2)足の浮腫みに 「湧泉」(ゆうせん) | 「湧泉」は、足の指をギュッと縮めたとき、足の裏側にできる山形のしわの一番上のところにあるツボで、多くの病気の治療に用いられます。高血圧や、冷え性・のぼせに効果的な「湧泉」は、気や血の流れをスム-ズにさせます。また水の流れもスム-ズにさせますから、浮腫みに有効なツボです。 |
水腫を治すせんべい「茯苓餅」
茯苓を細かく砕いたものと、米粉、白砂糖各等量に水を適量加えドロドロの糊状にし、とろ火にかけたフライパンで薄いせんべい状に焼きます。これを毎日食べ続けると、気力が充実し、精神も安定してくるうえ、動悸や水腫も治ってきます。
一般的に高血圧症とは、WHOが定めた数値を基準に判断しますが、東洋医薬学では、数値を余り重視しません。高血圧の付随症状である動悸、息切れ、頭痛、めまいなどに注目し、これらの軽減、解消を目的に処方し、服用した結果として血圧も下がる、といった治療方法をとります。これは高血圧に限ったことではなく、漢方では常に体質改善を重んじます。また、漢方薬は降圧剤ではありませんから、服用し始めたからといって即、数値が下がっていくわけではありません。長期間服用することによって、体質を改善し、諸症状が解消すれば大丈夫だと判断します。
体力ある人 | -のぼせ少ない | -鳩尾から脇が詰まった感じ、肩凝り、便秘 | -大柴胡湯 |
-のぼせる | -太鼓腹で、便秘がち、頭痛や肩凝り、むくみ | -防風通聖散 | |
-のぼせる | -生理不順、便秘、頭痛、肩凝り、イライラする | -桃核承気湯 | |
体力普通の人 | -のぼせ少ない | -動悸、不眠気味、便秘、イライラする | -柴胡加竜骨牡蛎湯 |
-のぼせる | -赤ら顔、首筋が凝る、やや便秘、頭痛やめまい | -黄連解毒湯 | |
-のぼせる | -赤ら顔、首筋が凝る、不眠症、イライラし、便秘 | -三黄瀉心湯 | |
体力ない人 | -喉が渇く | -夜間トイレによくいく、足腰が冷え、力が入らない | -八味丸 |
-喉は渇かない | -冷え性、貧血ぎみ、生理不順、頭痛、むくみ | -当帰芍薬散 | |
-喉は渇かない | -早朝に頭痛し、神経高ぶる、めまい | -釣藤散 |
(1)ビタミンCの含有量が抜群 柿の葉茶
柿の葉は、あらゆる病気予防の基礎となるビタミンCの含有量がほかに比べて抜群です。また成分にタンニン、カリウムが含まれているので、お茶代わりに飲むと利尿、血圧安定の効果があります。(柿の葉茶の作り方)よく水洗いした柿の葉を数分間蒸す。蒸しあがったら3mmほどに刻み、両手で絞って灰汁を取る。日光によく当てて乾燥させる。お茶として服用する。
(2)高血圧の妙薬根コンブ
低塩食物、低カロリ-など、様々な効力を持つ根コンブは、まさに高血圧防止のための食品といってもいいでしょう。成分のひとつであるラミニンは、アミノ酸の一種で、血圧降下剤として医療に用いられています。
(用法)30~40gの根コンブを刻み、どんぶりに入れて、湯冷ましを八文目まで注ぎ、一晩つけます。これを適宜飲用してください。
(3)高血圧の予防にクコ
高血圧の原因のひとつである毛細血管の脆弱。これは血管がもろくなることですが、クコの成分であるルチンに、こうした脆弱性を回復させる効果があります。
(用法)クコの葉10gを400ccの水に入れ、半量になるまで煮詰め、1日3回に分けて飲用します。
(4)便秘に効くドクダミ
高血圧には便秘が大敵です。ドクダミの成分であるクエルチトリン、カリウム、精油は便通をよくするとともに、動脈硬化の予防にも効果的です。
(用法)陰乾ししたドクダミ(茎、葉、花)10~20gを600ccの水で半量に煎じ、1日3回に分けて食後に飲用してください。
(1)血の流れをよくする 「肩井」 | 「肩井」は、肩の真ん中、ちょうど乳頭の真上にあたり、肩が凝ったな、と思うとつい手が行くところです。「肩井」は、鼻血やのぼせに効くことからもわかるように、血が上に昇ってしまって停滞している状態を治します。また、「肩井」は「百会」・「天柱」とともに、頭の血管をじょうぶにするツボです。 |
(2)指圧すると頭がすっきり 「百会」 | 高血圧のほかに、頭痛や不眠症にも効き、痔の特攻ツボでもあります。 |
(3)応用範囲が広い 「天柱」 | 「天柱」は、うなじの2本の太い筋上、髮の生え際にある左右二つのツボです。「天柱」は、頭痛、頭重、疲れ目、肩のこり、鼻づまりなど、多くの不快症状をやわらげるのに用いられるツボです。 |
低血圧は高血圧ほど危険性が高くありませんが、本人は体に力が入らない、貧血ぎみで足腰が冷える、食欲もない、といった症状に悩まされます。
冷え性の人 | -貧血ぎみ | -生理不順、めまい、立ちくらみ | -当帰芍薬散 |
-貧血ぎみ | -尿は少なく、下痢、めまい、動悸 | -真武湯 | |
-貧血ではない | -頭痛やめまいがし、胃下垂気味 | -半夏白朮天麻湯 | |
冷え性でない人 | -めまいがする | -尿が少なく貧血ぎみ、動悸 | -苓桂朮甘湯 |
-めまいはない | -貧血ぎみで、食欲なく、疲れやすい | -補中益気湯 | |
-めまいはない | -つかれやすく、動悸、息切れ | -小建中湯 |
体を温め、貧血を防ぐシソ酒
百薬の長ともいわれるお酒は、血行を盛んにして体を温め、疲れをとる効果があります。カロチン、ビタミンA、C、鉄分を豊富に含むシソが貧血防止に役立つため、シソ酒は、低血圧に効果的といわれています。
赤シソ(青シソも可)は、水洗いして水気をふき取って、ざく切りにする。
ざく切りにした赤シソを熱湯消毒して乾燥した容器に入れる。
赤シソの5倍のホワイトリカ-を注ぎ、密閉して冷暗所で保存する。3ヵ月したら熟成するので、1日1~2回、杯に1~2杯、食前に飲む。好みでハチミツや砂糖を加えてもよい。
各部位
東洋医薬学では、頭のことを「諸陽の首なり」として、大切な部位として扱ってきました。この大切なところを病む症状、つまり頭痛は、色々な病気から起こります。漢方が頭痛に対して優れた効能を発揮するのは、たいした病気もないのに、慢性的な頭痛を訴えるような場合です。頭痛の原因にはいろいろありますが、東洋医薬学では風寒暑湿熱などの外邪のほかに、日ごろの悪しき生活習慣や、感情の起伏も含めて考えます。
体力ある人 | -熱がある | -生理不順、めまい、立ちくらみ | -当帰芍薬散 |
-熱がない | -尿は少なく、下痢、めまい、動悸 | -真武湯 | |
体力普通の人 |
-喉が渇く | -尿が少なく貧血ぎみ、動悸 | -苓桂朮甘湯 |
-喉は渇かない | -貧血ぎみで、食欲なく、疲れやすい | -補中益気湯 | |
体力ない人 |
-熱がある | -普段から冷え性で、胃腸が弱く、脈も弱い | -桂枝人参湯 |
-熱がない | -貧血ぎみで、冷え性、眩暈や耳鳴、肩凝りがある | -当帰芍薬散 | |
-熱がない | -足冷、胃腸弱く、眩暈がする、胃下垂の人 | -半夏白朮天麻湯 | |
神経質、または 興奮しやすい人 |
-冷え性 | -発作的に頭が痛くなり、気分が悪い | -呉茱萸湯 |
-冷え性でない | -コメカミから項が痛み、胸がつかえ食欲不振 | -柴胡桂枝湯 |
(1)うなじから後頭部の頭痛に「崑崙」
「崑崙」は足外踝の骨の出っ張りのすぐうしろ、アキレス腱よりにあります。指圧したり、温めたりすることによって停滞している気や血の流れをスム-ズにしてやると症状は軽減します。
(2)額から前頭部の頭痛に「足三里」
「足三里」は、膝から下へ3cm、脛骨の外側にある有名なツボです。額から前頭部が痛む頭痛は、食べ過ぎや飲みすぎなど、胃腸障害が原因のものが多いのです。「足三里」は胃経に属しているツボで、消化不良にとてもよく効きます。
(3)側頭部の頭痛に「懸鍾」
「懸鍾」は、別名「絶骨」といい、足の」外踝から3cm上のところにある胆経上のツボです。
このツボは現代医学でいう偏頭痛に良く効きます。
1.生理時や更年期時の頭痛に「紅花(ベニバナ)」
紅花に含まれるサフロ-ルイエロー、カ-サミンなどの成分は頭痛を和らげる役目があります。
(用法):紅花の花を陰乾しにしたもの3gを、適量の清酒で煮詰め、それを1日3回に分けて温服いたします。
2.頭痛を和らげる「うどの根」
独特の芳香と歯ざわりで知られるウド。その根に含まれる精油類には鎮痛作用があるとされ、昔から頭痛薬として用いられています。
(用法):よく乾燥した根を1日15g、水400ccで半量まで煎じて、1日3回に分けて温服いたします。
めまいのことを東洋医薬学では、「眩暈」または「頭眩」、「目眩」などといい、水毒や血虚(貧血)による症状と考えています。水毒とは、水分代謝が悪くなり、体内に停滞した水分のことを言い、尿や汗の出方に異常が現れます。こういうときに外邪が侵入するとめまいを起こしやすいのです。めまいの大部分はこの水毒から起こってくるといえます。例えば、メニエ-ル病も内耳の水腫によってめまいを覚えます。したがって、漢方では利尿剤を薬方として治療に用います。また、内傷によってもめまいは起こります。内傷とは東洋医薬学の病因のひとつで、激しい感情の起伏、食べ過ぎ、疲れ、セックス過多などをいいます。このように東洋医薬学は、病気になる原因を外邪によるものだけに限らず生活習慣や精神的なものも含めてとらえていて、現代病のひとつであるストレスが原因になることを早くからきずいていました。
体力ある人 | -冷え性 | -のぼせて肩凝り、頭痛がする、便秘気味、高血圧 | -桃核承気湯 |
-冷え性ない | -のぼせて頭痛がし、イライラして不眠症 | -黄連解毒湯 | |
体力普通の人 |
-神経質 | -喉に何かつまった感じ、動悸がし肩も凝る | -半夏厚朴湯 |
-神経質でない | -めまいの度が激しい、頭痛がし、尿量減 | -沢瀉湯 | |
体力ない人 |
-冷え性 | -貧血ぎみ、肩凝り、頭痛があり、無汗 | -当帰芍薬散 |
-冷え性 | -動悸がし、胃が弱く、尿量減少し、下痢しやすい | -真武湯 | |
-冷え性でない | -イライラして怒りっぽい、肩が凝る、のぼせる | -釣藤散 | |
-冷え性でない | -貧血ぎみ、胃も弱い、動悸がして尿量減少する | -苓桂朮甘湯 |
めまいに効くオケラ(朮)
オケラの地下茎は、慢性の胃腸病や腎臓病などに古くから用いられてきましたが、失神やめまいなどにも効果があります。これらの効能は、オケラに含まれる芳香性の精油によるものといわれています。
用法:オケラの地下茎のひげ根を除き、土をよく洗い流して日干しにします。これを1日量5gとして、1.5~2.0合(300ccぐらい)の水で半量になるまで煎じ詰め、3回に分けて食間に服用します。
(1)咳や痰も同時にとる「梨粥」
鴨梨(中国種のナス型の梨)3個をよく洗って小さく切り、適量の水で30分煮ます梨の滓を取り除いてから適量の米を加えて粥にし、熱いうちに食べます。めまいは、東洋医薬学でいう水毒によるものが多いので、利尿作用のある梨を食べると効果的です。
(2)神経性のめまいに「五味子酒」
50gの五味子をビンに入れ、60℃に温めた白酒500ccを加え、1日1回振ります。これを1日3回3cc食後に飲みます。神経性のめまいや不眠・動悸・無力感などに効きます。
(1)精神を安定させる「百会」
「百会」は、耳を前に倒したとき、その端がほおに触れる左右の2点を結んだ線と、顔の中央を通る線が交差するところで、頭の上にあります。このツボを指圧するとめまいやのぼせが治り、イライラや不眠症などの神経症状がやわらぎます。
(2)複数の経絡が走る「三陰交」
「三陰交」は、足の内踝の骨の出っ張りから上へ3cm、脛骨の後ろにあるツボです。「三陰交」には、文字通り3本の経絡(脾経・肝経・腎経)が通っているので、めまいを治すのにとても効果的です。
のぼせることを東洋医薬学では逆上といいます。気の上衝によって起こることが多いのですが、瘀血(流れが悪くなって停滞した血)や熱、水毒(体内の余分な水分)によっても起こります。なにによるのぼせか、ということを判断するにはのぼせに付随する症状を丁寧に観察しなければなりません。それらには、赤ら顔や頭痛などのほかに、目の充血、鼻衈、喉の渇き、めまい、肩凝り、動悸、便秘などがあります。また、のぼせると気や血、熱などが上半身に集中するので、下半身は冷えていることが多いものです。適切な処方を服用することによってのぼせが解消すると、同時に下半身の冷えも治ってきます。
肥満体 | -赤ら顔 | -便秘、鳩尾が痞える | -三黄瀉心湯 |
-顔の赤みは少ない | -喉が渇く、頭痛、肩凝り、便秘気味 | -防風通聖散 | |
痩せ型 | -便秘気味 | -顔は赤いが、足冷、肩凝り | -桃核承気湯 |
-便秘気味 | -桃核承気湯よりも諸症状が軽い | -桂枝茯苓丸 | |
-便秘なし | -三黄瀉心湯より軽いとき、鼻血 | -黄連解毒湯 | |
-便秘なし | -顔が赤くなり動悸がする、目が充血 | -苓桂味甘湯 |
のぼせると、つい顔や頭を冷やしたくなりますが、そんなときは、たいてい下半身が冷えていますから、まず冷えているところを温めるように心がけてください。ただし、熱いお湯などで急激に温めると、それだけ冷えるのも早いので、ぬるま湯、暖かい手などでゆっくりと温めましょう。「三陰交」を指圧・施灸などで刺激することによって肝経・脾経・腎経の調和をはかり、全身の調子がよくなります。とくに、冷え・のぼせに効果的ですが、そのほかに生理不順・帶下などに効き、女性にとって大切なツボです。
顔色は、各臓腑の異常にともまって、赤、黄、白、青、黒などに変化します。ここではおもに黄色い場合と青白い場合を取り上げます。赤い場合は「のぼせ」を参考にしてください。肌が黄色くなることを現代医学でも東洋医薬学でも黄疸といいますが、東洋医薬学では「肝」が悪くなる前に「脾・胃」が犯されると考え、それが「腎」にまで及ぶと、額だけが黒く見えることから、「黒疸」と呼びました。なお、顔色が青白いのは冷えをあらわしていると考えます。
顔色黄色い人 | -喉が渇く | -上腹部から胸が苦しい、便も尿も出にくい | -茵陳蒿湯 |
-喉が渇く | -茵陳蒿湯証より喉の渇きがひどく、下痢ぎみ | -茵陳五苓散 | |
-喉が渇く | -体力があり、胸元が苦しい、便秘気味 | -大柴胡湯 | |
-喉が渇く | -体力がなく、疲れやすく、頻尿、腹痛 | -小建中湯 | |
顔色青白い人 | -胃腸が弱い | -食欲不振で腹に力がない、寝汗をかく | -人参養栄湯 |
-胃腸が弱い | -食欲不振、神経質、動悸がし、不眠症 | -加味帰脾湯 | |
-胃腸悪くない | -冷え性、疲れやすい,下腹痛、肩凝り | -当帰芍薬散 | |
-胃腸悪くない | -冷え性、皮膚に潤いがない、生理不順 | -四物湯 |
黄疸によい「ドジョウ豆腐煮込み」ドジョウ500gの内臓を取り除きよく洗います。塩少々と適量の水とともに鍋に入れ、すこし煮、角切りの豆腐250gを加え煮込みます。湿熱を取り去る効果があり、黄疸のほかに、浮腫みも改善します。
(1)黄疸の場合には「カワラヨモギ」
カワラヨモギに含まれる精油分のうち、ジメチルエスクレチンには、胆汁の分泌促進作用があり、肝臓病からの黄疸に効き目があります。
(2)貧血の場合には「朝鮮人参」
朝鮮人参には、サポニン、精油、ミネラル、ビタミンなどの豊富な成分が含まれており、造血作用を高める効力を持っています。
(用法)朝鮮人参1日量5~10gを細切りにし、600ccの水で半量になるまで煮詰め、1日3回に分けて空腹時に服用してください。
漢方薬は、健康人と病人との間で、体の調子がすっきりせず、体質改善をしたいときに、しばしば使われます。ですから、体質的なものが起因している「鼻汁が出る」といった症状は漢方薬が向いているといえます。適した処方を選ぶには、まず体力があるか、ないかで分けられます。次に鼻汁が濃いか、顔色が悪いかなどがポイントになります。現代でいう慢性鼻炎や蓄膿症のように鼻汁が濃い場合は、たいてい頭が重く、気分もすっきりしません。漢方薬で膿を取り除くことによって、ほかの不快症状も解消させます。水様性の鼻汁や顔色が悪く冷え性気味の人の鼻汁は、胃が冷え、体の中に余分の水分がたまっているために起こると漢方では考えます。アレルギ-性鼻炎も、この中に含まれます。
体力が普通以上の人 | -鼻汁が濃い | -アレルギ-性体質、耳、鼻、喉に腫れと痛み | -荊芥連翹湯 |
-風邪を引くと必ず鼻がつまり、首筋から肩にかけてこる | -葛根加辛夷川芎 | ||
-慢性的に鼻汁が長引いている、皮膚のトラブルも多い | -十味敗毒湯 | ||
-鼻汁が薄い | -ぜいぜいと湿った咳をしたりくしゃみをよくする | -小青竜湯 | |
体力が普通以下の人 | -顔色が悪い | -冷え性、冷やすと症状が悪化する、脉は沈んで弱い | -麻黄附子細辛湯 |
-顔色は普通 | -胃が重苦しく、めまいや動悸がする、尿の出がよくない | -苓甘姜味辛夏仁湯 | |
-胃が弱く、腹も力がなく、たたくと水音がする、頭痛 | -半夏白朮天麻湯 |
漢方では、五臓六腑にほかに、各種食べ物やその味を5つに分け、各臓腑と結びつけてその生理を説明しています。たとえば、少しの氣候の変化で、すぐ風邪を引いてしまい、年中は鼻をぐずぐずとさせている人は肺虚証といって、生まれつき呼吸器系が弱いのです。肺を養い強くする穀物は米、青菜ではネギ、果物では桃で、味はピリッと辛いものがよいようです。ご飯と、ネギや唐辛子を適量入れた麻婆豆腐、デザートに桃といった献立がよいということです。
不快な鼻づまりを解消する「ドクダミ」
ドクダミは、皮膚病、高血圧、痔、淋病など適応範囲の広い薬草で、「十薬」とも呼ばれています。通常は乾燥したものを煎じて薬用茶にしますが、蓄膿症の不快な鼻汁を止めて鼻の通りをよくするのはドクダミの生葉。ドクダミには、利尿作用のあるカリウムがたくさん含まれているので、ドクダミは高血圧の予防薬としてよく用いられます。また、ドクダミ特有のにおいは、デカノイルアセトアルデハイドによるものですが、この成分は、水虫の菌(白鮮菌)やブドウ球菌など、細菌の繁殖を抑える働きがあります。ただし、制菌力の成分は生葉だけで、乾燥すると効力はなくなります。
(用法)新鮮な生葉を4~5枚を水洗いして、少量の塩でよくもみ、汁が出てきたら丸めて鼻孔に詰めます。そのまま30分ほどおき、鼻をかみなす。これを左右交互、1日3~4回繰り返すと、ドクダミの働きで膿が引き出され、大変すっきりします。梅雨の頃に白い花を咲かすが、この白い花は葉の変形したもので、真ん中の棒状(黄色)のものだけが花。
(1)鼻の通りをよくする「迎香」
「迎香」は尾翼の両外側にあるツボです。病状が初期のうちに、このツボを思いっきり指でこすっただけで、かなりの効果があります。
(2)電車の中でも指圧「合谷」
「合谷」は鼻炎のほかに顔のおでき、頭痛に効果があります。手のツボで簡単に指圧できますので、仕事の合間にマッサ-ジしてみましょう。ちなみにこのツボを押さえたときに痛む人は便秘気味のはずです。
一口に耳鳴りといっても、キーンという金属音や、ゴロゴロという鈍い音など、聞こえる音も人さまざまですが、東洋医薬学では耳鳴りのことを耳鳴(じめい)といい、蝉の鳴き声のような音が聞こえる場合が多いとされます。耳鳴りには虚証のものと実証のものとがあり、虚証は、めまいや腰痛などが付属症状としてみられるもので、「腎」の働きの衰えや、虚火(熱病の後期に見られる微熱など)の上昇が原因と考えられます。現代医学では、耳鳴りには精神的ストレスから起こる場合があると考えますが、東洋医薬学でも感情の起伏で耳鳴りが起こると考え、これが実証のものに相当します。耳の中で鐘をたたくような音が聞こえるもので、「肝・胆」の火(機能亢進で生じた熱)が上昇したため、つまり激しく怒ると、実証の耳鳴りが起こると考えられます。